柳川・沖端水天宮祭
沖端(おきのはた)水天宮は、稲荷宮・祇園社・水天宮の三神を祀り、地元では「水天宮さん」と親しまれています。
沖端は、平家の落人が開いた港町で、江戸期には藩の舟小屋(造船所)がありました。
毎年5月3~5日に行われる水天宮祭では、水難除けと安産を祈願して、文化文政期の祭礼形式そのままに、六艘の舟で舟舞台(三神丸)を造り、掘割を上り下りしながら芝居や囃子が奉納されます。
柳川出身の詩人・北原白秋は、詩集「思ひ出」の中で、次のように述懐しています。
「まだ夏には早い五月の水路に杉の葉の飾りを取りつけ初めた大きな三神丸(さんじんまる)の一部をふと學校がへりに發見した沖ノ端の子供の喜びは何に譬へよう。艫の方の化粧部屋は蓆で張られ、昔ながらの廢れかけた舟舞臺には櫻の造花を隈なくかざし、欄干の三方に垂らした御簾は彩色も褪せはてたものではあるが、水天宮の祭日となれば粹な町内の若い衆が紺の半被に棹さゝれて、幕あひには笛や太鼓や三味線の囃子面白く、町を替ゆるたびに幕を替え、日を替ゆるたびに歌舞伎の藝題もとり替えて、同じ水路を上下すること三日三夜、見物は皆あちらこちらの溝渠から小舟に棹さして集まり、華やかに水郷の歡を盡く…」
今年はコロナ禍で3年ぶり、規模を縮小しての催行とか。子どもたちのお囃子を後にして、北原白秋の生家へ向かいます。