大刀洗・今村天主堂
大刀洗町の今村天主堂(今村カトリック教会)を訪ねました。
筑後平野の田園風景に建つ天主堂は、大正2年(1913)の建築。設計は、礼拝堂建築で知られた鉄川与助です。ロマネスク様式の煉瓦造で、堂内は高いリヴ・ヴォールト天井と仏製ステンドグラスで壮麗な空間になっています。煉瓦造で双塔を持つ教会堂は類例が少なく、鉄川建築の中でも意匠が優れたものとされています(国重文)。
今村は、筑後で数少ない隠れキリシタン集落でした。戦国期、豊後大友氏(キリシタン大名)の筑後進出でキリスト教が広まり、江戸期の過酷な弾圧下で、200年以上の間、隠れキリシタンとして信仰が受け継がれました。
パードレ(神父)を持たない隠れキリシタンは、長い年月の間に本来のカトリックとは異なる信仰形態に変容する例が多いそうです。今村では、集落が団結して信仰を守り、幕末に浦上(長崎)の信徒らにより発見された後は、密かに交流を保ち、最終的に本来の信仰形態に戻っており、「奇跡の村」と云われます(このため「潜伏キリシタン」と呼ぶのが正しいそうです)。
シンボルの天主堂は、2022年6月から10年間、耐震補強工事のため閉鎖されます。この日は、信徒の皆さんが企画して「お別れ会」が開かれました。