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2018/07/29

世界遺産・旧富岡製糸場

高崎から富岡へ足を延ばし、世界遺産・旧富岡製糸場を見学。

20180730明治5年(1872)、富国強兵を掲げた明治新政府が殖産興業のため設立した官営工場です。
信州~上州の良質な生糸は、明治初期には外貨獲得の主要輸出品となっていました。
小規模な家庭内手工業から大規模な工場での大量生産に切り替えるため、フランス人技師を招き、最新の器械製糸技術が導入されました。

開業に当たって全国から工女を募集しましたが、生まれて初めて見る煉瓦造りの建物は錦絵のようで夢かと驚いたと回想録「富岡日記」に記されています。工女は1~3等・等外で給金に差があり、1等工女は皆の憧れでした。

明治26年(1893)に民営化された後は、三井家→原合名会社→片倉工業と経営が移りましたが、昭和62年の操業停止まで一貫して製糸工場として稼働。主要な建物は、百年先を見越した大規模な木骨煉瓦造りのおかげで、大きな改修を加えることなく受け継がれ、創業当時から残る東西置繭所・繰糸場は国宝、検査人館・女工館・首長館は国重文です。

平成26年(2014)には、周辺の田島弥平旧宅(養蚕農家の原型)・高山社跡(養蚕教育機関)・荒船風穴(蚕種貯蔵施設)を含めて「富岡製糸場と絹産業遺産群」として、ユネスコの世界遺産(産業遺産)に登録されました。

開業当時の日本は、学制公布(1872)、新橋~横濱間に鉄道開通(1872)の時代。西南戦争(1877)や鹿鳴館完成(1883)よりも前ですから、富岡製糸場が設立当時の姿で残っていること自体が奇跡かも知れません。

保存修復工事中の場所も多いですが、近代国家の息吹を今に伝え、モノづくりニッポンの原点を見た気がしました。

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ウィリアム・モリスと英国の壁紙展

妻と一緒に、群馬県立近代美術館(高崎市)で開催中の「ウィリアム・モリスと英国の壁紙」展に行ってきました。

20180729ウィリアム・モリス(1834-96)は、19世紀ヴィクトリア朝の英国で活躍したデザイナーです。

英国で室内装飾に壁紙が使われるようになったのは19世紀ころ。フランス様式の宮廷風な古典的なデザインが好まれ、産業革命により大量に機械生産されるようになりました。
そのような時代にあって、モリスは、真に快適で満足できる「美しい生活」には丁寧な手仕事による家具や壁紙が欠かせないと考えました。鳥や草花をテーマにした明るくリズミカルなデザインと、木版による丁寧な手作業で美しい壁紙を生み出し、英国の壁紙デザインを革新しました。

この企画展は、モリスとその仲間たちのデザインを中心に、「1.モリス以前」「2.モリスとモリス商会」「3.アーツ&クラフツ運動」の3部構成で、19世紀に隆盛期を迎えた英国壁紙デザインの変遷をたどっています。展示された約130点の貴重な壁紙や版木は、英国有数の壁紙会社サンダーソンの協力で日本初公開です。

ブロックパターンの壁紙のほか、モリスデザインで統一した居間「クラッシックモリス」、現代風のモノトーン調で統一した「ピュアモリス」のコーナーが造作され(いずれも撮影可)、人気を集めていました。

この企画展は、8月26日まで開催しています。

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2018/07/15

房総の素掘りトンネル巡り

房総半島の丘陵部には、泥岩の柔らかい地層を活かした素掘りのトンネルが多く見られます。週末を利用して、房総半島の素掘りトンネルを巡ってきました。

20180708a初めに、小湊鐡道月崎駅近くの林道月崎3号線にある通称「月崎3連トンネル」へ。
県道沿いにぽっかり開いた「永昌寺トンネル」の入口。明治31年(1898)の完成で、全長142m・幅3.1m。将棋の駒のような五角形で、日本古来の「観音掘り」という掘り方です。
地元の生活道路として現役で、出口部分は鋼板とコンクリで補強されていました。

その次に現れるのが「柿木台第二トンネル」。銘板はありませんが、小さいながら綺麗な円形の素掘りで、暗闇に浮かんだ丸い出口に吸い込まれそうでした。

さらに進むと「柿木台第一トンネル」があります。こちらは、明治32年(1899)の完成で、全長78m・幅3.5m。全線できれいな五角形の観音掘りを留めています。

20180715a続いて、「いちはらクォードの森」の手前から林道月崎1号線へ。
どんどん奥に進むと、忽然と現れた「月崎トンネル」。掘られた年代は不明。もとは一つのトンネルだったのが、真ん中の天井部分が崩落し、入口と出口に短いトンネルが残りました。
天井から差し込む太陽光が神秘的なトンネルで、ネット上では「ジブリの世界」とか「クォードの森神殿」などと表現されることも。
さらに奥に進むと小さな素掘りの円形トンネルがあり、まもなく道がなくなりました。

20180715b最後に、養老渓谷の向山トンネルへ。
上下に出口があって、思わず目を疑います。
正確には、上が向山トンネル旧出口で、下が共栄トンネル現出口です。
戦前からあった向山トンネル(全長92m)は、もともと上り勾配で直線に掘られ、上の出口に通じていました。昭和45年、元のトンネル内を途中から下り勾配に掘り下げ、左に湾曲させて共栄トンネル(全長23m)の新出口が完成。おそらくすぐ先の養老川に架かる共栄橋に動線をつなげるためと思われますが、世にも不思議な二階建てのトンネルになりました。
壁面の高所に見られる横穴は、旧道時代に掘られた防空壕跡で、かつての道の高さが分かります。

今回の素掘りトンネル巡りは、林道メインなのでバイク+GRの軽装備で廻りました。
深い山に囲まれて次々に出現する非日常の光景が面白かったです。

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