信州・無言館
旅の終りに、上田市の無言館へ立ち寄ります。
静かな丘に建つ小さな美術館で、戦没画学生の遺作を収集・展示しています。
ずい分前にその存在を知って、いつか訪ねてみたいと思っていました。
この美術館は、窪島誠一郎氏(故水上勉の子息)が、出征経験をもつ画家・野見山暁治氏の活動に共鳴し、戦地で亡くなった画学生の遺族を訪ねて遺作を預かり、平成9年に私費で建てたものです。
館内は、十字架状のフロアに、コンクリートの無機質な壁、薄暗い照明。壁には画学生の遺作と、名前.・略歴、戦死場所と月日が記された小さな説明のみ。ガラスケースに、生前の写真や愛用した画材道具、戦地から家族に宛てた手紙などの遺品が展示されています。
展示に声高な反戦主張などイデオロギー的な「評価」は加えられておらず、ただ70年前の「事実」と残された家族の「想い」を淡々と伝えています。
これらの展示を見て何をどのように感じるかは、おそらく見る側に委ねられています。館主の窪島氏は、無言館と名付けた理由を、「展示された絵画は何も語らず『無言』だが、見る側に多くを語りかける」という意味と同時に「見る側もまた『無言』になる」という意味も含んでいると語っています。
平成20年には第二展示館「傷ついた画布のドーム」が開館。その名のとおり、ドーム状の天井には、戦没画学生たちのデッサンが無数に貼り付けられています。
前庭の「絵筆の碑」の説明に、「壁面を汚している赤いペンキは、2005年6月18日、実際に『無言館』の慰霊碑にペンキがかけられた事件を『復元』しました。『無言館』が多様な意見、見方のなかにある美術館であることを忘れないためです」とありました。
無言館を訪れて、私自身は、亡くなった若者たちのもっと生きたかったという無念さ、生きて帰れないことへの絶望感、自分の意思と無関係に死ぬ理不尽さと運命に抗えない憤りが感じられて、言葉が出ませんでした。
今回の旅は、これで終わりです。久々の信州はとても充実した旅になりました。帰りは、関越道も東北道も渋滞30km。上信越道→関越道→北関東道→東北道ルートで午後10時ころに帰宅。今回の走行距離は627km、妻のFIT3 HVの燃費は31.5km/Lでした。
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