2023/03/05

特別展「伽耶」

 九州国立博物館で開催中の特別展「伽耶」に行ってきました。

20230304「伽耶」は、3~6世紀に朝鮮半島南部に存在した王国群の総称です。
高句麗・新羅・百済の強国が割拠し、倭国ではヤマト政権の古墳時代に当たります。

古くから鉄の産地で、3~4世紀は「金官伽耶」を盟主に、新羅・百済、中国、倭(弥生時代)と対外交易を展開。5世紀に高句麗が侵攻すると、「大伽耶」が高句麗と連携し、百済を牽制。中国(南斉)に朝貢し「輔国将軍本国王」の地位を得るなど、外交上手でした。

6世紀、百済が伽耶に侵攻すると、新羅と同盟して対抗しつつ、任那日本府の倭国(ヤマト政権)に加勢を求めました(倭では派遣を巡り「磐井の乱」(527)が勃発)。

しかし新羅が同盟を破って侵攻し、「金官伽耶」が降伏。伽耶連合は内部分裂し、「大伽耶」が新羅に服属(562)して消滅しました。

この特別展は、韓国国立中央博物館、国立歴史民俗博物館と九州国立博物館の主催です。日韓の研究成果を反映した「伽耶の興亡」と、九州展では「渡来人」を加えたテーマ構成になっています。
渡来人と倭人が共存した倭国の社会を俯瞰し、伽耶が倭国の文化形成に与えた影響について、最新の研究成果を紹介しています。

伽耶をテーマにした展覧会は、国内では30年ぶり。展示は、紀元前3世紀~6世紀の鉄・金・木工製品や土器など273点(うち韓国宝物3、国重文11、県文化財40、市町村文化財4)に及び、見応えがありました。
千葉県から、市原・山倉1号墳出土「渡来人形埴輪」(県文化財)が出展されています。

この特別展は、九州国立博物館で3月19日(日)まで開催中です。

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2023/02/12

「竹久夢二」展

佐賀県立美術館で開催された「竹久夢二」展に行ってきました。

20230212a竹久夢二(1884~1934) は、大正浪漫期を代表する画家です。

夢二は、岡山県に生まれ、16歳のとき福岡県に移住。17歳で単身上京し、苦学しながら投稿した雑誌や新聞の挿画が評判になりました。25歳で発表した「夢二画集・春の巻」(明治42年)が大ヒット。国内外で精力的に作品を発表しました。

洋風に和の抒情性を採り入れたモダンな「夢二式美人画」 が人気で、出版物の挿絵や表紙を手掛けるグラフィックデザイナーの先駆けでもありました。

この展覧会は、「佐賀で巡り合う大正浪漫の世界」がサブタイトルの新春特別展です。九州初公開の「南枝早春」「春の夜」(いずれも昭和初期)、「薔薇 画賛」「ホームソング」(いずれも大正15年頃)など、約209点の作品を紹介しています。

夢二が愛用した「ベス単」(ベスト・ポケット・コダック)で撮った写真が面白かったです。スナップ的な行動記録と、絵の構図の研究用に撮影した写真だそうですが、シャッターを押す瞬間の心象が伝わってきました。

この日は会期の最終日で、年代を問わず大勢の観客で盛況でした。

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2022/12/18

「バンクシーって誰?」展

福岡アジア美術館で開催中の「バンクシーって誰?」展に行ってきました。

20221218a英国・ブリストルの街で1990年代にストリート・アートを描き始めたとされるバンクシー。
世界各地で、政治的・社会的事象を痛烈に風刺したアートを残すゲリラ的な表現活動で知られますが、正体は謎のままです。

この展覧会は、世界各国で好評を博した「ジ・アート・オブ・バンクシー」展の傑作群を、独自の切り口で紹介した日本オリジナルの企画です。コレクター所蔵のアトリエ作品のほか、バンクシーの主戦場=ストリートを丸ごと再現した展示(没入展示)が見どころです。

写真は、2002年、ロンドン・ウォータールー橋の階段に描かれた「Girl with Balloon」(赤い風船と少女)の再現。この絵のアトリエ作品は、ザザビーズのオークションで落札(約1億5000万円)された瞬間、バンクシーによって額に仕組んだシュレッダーで切り刻まれ、大きな話題となりました。

ストリート作品には、その時代にその場所で描かれた理由があります。街並みごと再現することで、その時代背景と空気感を疑似体験でき、作品に込められた意味を深く考えさせられました。

この企画展は、東京など5都市を巡回し、福岡で3月26日(日)まで開催中です。

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2022/10/15

特別展「ポンペイ」

九州国立博物館で開催中の特別展「ポンペイ」に行ってきました。

20221015ポンペイは、古代ローマの植民市で、貴族~奴隷まで老若男女1万2000人が暮らす港湾商都でした。

紀元79年、ベスビオ火山の大噴火で一夜にして火山灰に埋もれて消滅。1748年に発見されるまで、完全に地中に封印されていました。

今回の特別展は、ナポリ国立考古博物館が所蔵する出土品をメインに、日本初公開を含む約120点の出土品を展示しています。

展示は、「序章 ベスビオ山噴火とポンペイ埋没」「1 ポンペイの街~公共建築と宗教」「2 ポンペイの社会と人々の活躍」「3 人々の暮らし~職と仕事」「4 ポンペイ繁栄の歴史」「5 発掘のいま、むかし」の5テーマに分けて紹介。

個人的には、女性犠牲者の石膏像は衝撃でした(ポンペイの犠牲者は2000人、その多くが邸内に避難した富裕層だそうです)。

邸宅の壁を飾ったフレスコ画、床を飾ったモザイク画の精巧さに驚嘆し、炭化したパンに庶民の日常を想い、剣闘士が使った兜や膝当てに円形劇場の熱狂が伝わりました。

古代ローマの都市の繁栄と人々の暮らしが生き生きと蘇る好企画です。

この特別展は、東京→京都→宮城と巡回して、九州が最後。九州展は12月4日(日)まで開催中です。

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2022/10/02

「鳥獣戯画と愛らしき日本の美術」展

福岡市美術館で開催中の「国宝鳥獣戯画と愛らしき日本の美術」展に行ってきました。

20221002鳥獣戯画は、京都・高山寺に伝わる四巻(甲・乙・丙・丁)の絵巻物です。

甲巻は擬人化した動物が、乙巻は実在と空想の動物が、丙巻は人物と擬人化した動物が、丁巻は人物のみが描かれています。甲・乙巻は平安後期の、丙・丁巻は鎌倉初期の作と考えられていますが、誰が何のために描いたのかは不明だそうです。

今回の展覧会は、鳥獣戯画に連なる「動物」と「簡潔な表現とユーモア」を描いた作品がテーマです。「1章 祈りにはぐくまれしいのち」「2章 いのちへのまなざし」「3章 引き算の美」「4章 心を伝える」の4部構成で64点を展示しています。

訪れた日は後期展示(9/27~)で、鳥獣戯画の乙巻と丙巻が展示されていました。10m前後の長い巻物ですが、解説と対比して楽しく見学できました。江戸期に描かれた戯図巻や略画式も、笑える内容で面白かったです。

次はぜひ鳥獣戯画の甲巻と丁巻も見てみたい…と思いました。この展覧会は、福岡市美術館で10月16日(日)まで開催中です。

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2022/09/18

雅楽「源氏物語」

妻と一緒に、久留米シティプラザで行われた「雅楽 源氏物語」公演に行ってきました。

20220918大名有馬家久留米入城四百年記念行事の一つで、平安王朝文学の最高傑作「源氏物語」に歌舞(うたまい)の曲を組み合わせた企画です。演奏は東京楽部(がくそ)、プロデュースは野原耕二さんでした。

公演に先立ち、旧藩主家十六代御当主(東京水天宮宮司)の挨拶と、その御息女(東京水天宮権禰宜)による奉納神楽「天之産」(あめのむすび)が披露され、十二単装束の雅な舞で観客を魅了しました。

第一部は管弦で、「盤渉調音取」(ばんしきちょうねとり)、「青海波」(せいがいは)、「越天楽」(えてんらく)の三曲。第二部は舞楽で、左舞の「萬歳楽」(まんざいらく)、右舞の「落蹲」(らくそん)の二舞でした。

雅楽は、律令制(880)によって日本独自の音曲の創作が始まり、約150年かけて完成したそうです。このため、日本古来の「国風歌舞」(くにぶりのうたまい)、外来ベースに日本化した「舞楽」、和歌や漢詩に曲を付けた「朗詠」(うたもの)の3つに分類されます。千年続く歴史的文化財として、ユネスコ無形文化遺産に登録されています。

この日は、数十年に一度の猛烈な台風14号の接近で開催が危ぶまれましたが、大勢の観客が王朝絵巻を見守りました。

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2022/08/12

「二つの旅 青木繁×坂本繁二郎」展

東京・京橋のアーティゾン美術館で開催中の「ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎」展に行ってきました。

20220812

青木繁(1882-1911)と坂本繁二郎(1882-1969)は、ともに久留米出身で、同じ師の下で絵画を学びました。今回の展覧会は、二人の生誕140年を記念したアーティゾン美術館と久留米市美術館の企画展で、二人展としては、石橋正二郎が久留米に石橋美術館(現久留米市美術館)を開設(1956)した時の記念展以来、66年ぶりです。

展示は、第1章「出会い」(二人の出会い~上京後の親しい交際)、第2章「別れ」(二人の明暗を分けた1907年の東京勧業博覧会~青木の早逝)、第3章「旅立ち」(その後の坂本の歩み)、第4章「交差する旅」(二人に共通する画題と絶筆)の4部構成です。

天才肌の青木と努力家の坂本。性格も芸術性もまったく正反対だった二人の出会いから別れ、坂本の青木顕彰の動きとその後の画業を、館所蔵作品など約250点で俯瞰しています。

個人的には、青木が房州布良で描いた「海の幸」(1904)、命運をかけた「わだつみのいろこの宮」(1907)、絶筆の「朝日」(1910)の実物を見ることができ、感動しました。

この展覧会は、10月16日(日)まで開催中です。その後、久留米市美術館で10月29日(土)~翌1月22日(日)まで開催されます。

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2022/05/03

カジュアルなクラッシック音楽会

久留米シティプラザで行われた「高嶋ちさ子&加羽沢美濃カジュアルクラッシックスmeetsゆかいな音楽会」に、妻と一緒に行ってきました。

20220503高嶋ちさ子さんといえば、ヴァイオリニストの傍ら、TV番組のざわつく超絶トークで人気です。
ヴァイオリニストとしては、「観ても、聴いても、美しく楽しいヴァイオリンアンサンブル」をコンセプトに、クラッシックが身近に感じられるコンサート活動をされています。

今回も、超絶トークの解説を交えながら、「誰もが知っている曲」を「5分以内で演奏する」コンセプトで、気軽にクラッシックを楽しみながら、ヴァイオリンの技法も理解できるように、構成と演出がとても工夫されていました。

ピアニスト・作曲家の加羽沢美濃さんは、観客のリクエスト数曲を即興メドレーで演奏したり、アンコールで即興曲「久留米に来るのは大変だ」(GWの大渋滞で久留米入りが遅れて大変だったそう)を披露して拍手喝采でした。

高嶋組の藤堂昌彦さん(Vn)、森本安弘さん(Vn)、長石篤志さん(Va)、西方正輝さん(Vc)も、高嶋さんのトークに負けず劣らず、「歌って踊れる弦楽奏者」の楽しいパフォーマンスを披露して、ほぼ満席の場内は大爆笑。とても楽しい2時間でした。

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2022/04/02

毒薬と老嬢

久留米シティプラザで上演された演劇「毒薬と老嬢」に行ってきました。

20220402ジョセフ・ケッセルリング作のブラックコメディで、1941年からブロードウェイで3年半1444回、翌42年からウエストエンドで3年3か月1337回のロングラン上演された傑作です。

舞台は、第二次世界大戦下のブルックリン。旧家の屋敷に住む仲良し老姉妹アビーとマーサは町で評判の慈善家です。身寄りのないお年寄りに屋敷の部屋を貸し、手厚く施しをする二人。しかし、もてなしで振る舞う自家製の「ぼけ酒」にはある秘密がありました…。

今回の演出は錦織一清さん、主演のアビーを久本雅美さん、マーサを藤原紀香さんが演じています。老姉妹に振り回される人々として、同居の甥テディ(渋谷天笑)、その弟モーティマー(納谷健)と婚約者のエレーン(惣田紗莉渚)、エレーンの母ハーバー牧師(清水ひとみ)、悪い甥ジョナサン(室たつき)とその手下アインシュタイン(丹羽貞仁)、刑事ルーニー(笠原章)と巡査オハラ(嘉島典俊)・プロフィー(我善導)・クライン(鈴木翔音)、施設長ウィザースプーン(川端槇川二)ほかの皆さんが出演(画像は公式チラシ)。

セリフを関西弁にしての上演で、主演の二人のアドリブを交えた掛け合いが面白く、舞台挨拶でも久本雅美さんのギャグが冴え、大爆笑の3時間でした。

アフタートークでは、テディ(渋谷天笑)の司会でハーバー牧師(清水ひとみ)とオハラ巡査(嘉島典俊)が登場。楽しい舞台裏を明かしてこれまた拍手喝采でした。

この演劇は、東京・新橋演舞場→名古屋・御園座→福岡・久留米シティプラザ→札幌・道新ホール→大阪・松竹座で順次公演されています。

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2022/03/27

十人十色の音楽会

久留米シティプラザで開催された「十人十色の音楽会・ピアノコンサート」に行ってきました。

20220327福岡県出身の若手ピアニストで、いずれも久留米国際バッハ音楽コンクールで受賞歴のある恒松沙季さん(第3回平均律部門1位)、江藤花恵さん(第4回V部門1位)、吉村和弥さん(第5回グランプリ)の3人が出演。

〔曲目〕前半~バッハのイタリア協奏曲(恒松)、スカルラッティのソナタK487 (吉村)、モーツァルトのバターつきパン(恒松)、同きらきら星変奏曲(恒松)、ショパンの子犬のワルツ(恒松)、同ノクターン第2番(江藤)、同ノクターン第20番(江藤)、同雨だれの前奏曲(吉村)、同英雄ポロネーズ(吉村)。

後半~バタジェフスカの乙女の祈り(江藤)、ベートーヴェンのピアノソナタ悲愴(吉村)、同月光(吉村)、ブラームスのワルツ第15番(江藤)、シューベルトの即興曲第2番(江藤)、ドビュッシーのベルガマスク組曲より月の光(恒松)、同前奏曲第2集より花火(恒松)、リストのラ・カンパネラ(吉村)でした(敬称略)。

恒松さんは繊細な演奏、江藤さんは情熱的な演奏、吉村さんは力強い演奏とまさに十人十色で、久々に聞くピアノの生演奏に心が洗われました。明るい選曲が多い中、吉村さんが選んだのはベートーヴェンの2曲。コロナ禍とウクライナ侵攻の現況が1日も早く収束するよう願いを込めてと語った吉村さんの演奏が印象的でした。

アンコールは、チャイコフスキーのくるみ割り人形を3人で連弾し、拍手喝采でした。

この音楽会は、昨年企画されましたがCOVID-19による緊急事態宣言で中止。今回は、まん延防止措置が解除されたとはいえ、まだまだ安心できない状況なので、観客が十数人でも入ってくれれば…とのことでしたが、当日は140席のCボックスが満席でした。

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